西いなば気楽里通信
西いなば気楽里通信R3.5月号
今月の特集
シリーズ「西いなば探訪」⑤ 吹き抜ける東南アジアの薫風 ~亀井さんの御朱印船貿易~
およそ400年前、鹿野城主亀井茲矩は、領内をもっと豊かにと積極的に干拓や用水路などの整備を進める一方、九州の大名を除いてはただ一人御朱印船貿易を行いました。西いなば地域には亀井さんの御朱印船貿易にかかわりの深いモノ・コトが今なお輝きを放ち続けています。
東南アジア発祥の「うぐい突き」
気高町睦逢の大堤池は農業用ため池として亀井茲矩により造られ、現在も多くの水田を潤しています。稲刈りが終わると、池の底にたまった泥などを流すために水抜きを行いますが、この時行われるのが伝統漁法「うぐい突き漁」です。細く割った竹を編んだ「うぐい(魚伏籠)」と呼ばれる筒状の漁具を泥の中に突きたて、中に入ったコイやフナなどをつかまえます。亀井さんが御朱印船貿易の際に、タイから漁法とともに持ち帰ったと云われています。この漁により、池に堆積した泥は下流へと。流れ出た泥は下流の田んぼの地力回復にもつながります。まさに先人の偉大な知恵です。
地元、逢坂地区では、この伝統漁法を後世に伝えようと、平成6年に「大堤うぐい突き保存会」が結成され、毎年10月初旬にうぐい突きを体験できるイベントが開催されています。
西いなばの特産品「生姜」
亀井茲矩の御朱印船貿易では、刀剣や金銀の細工物・蒔絵の道具などを買い入れて輸出し、絹織物・毛織物・動物の角や毛皮・象牙・珊瑚・香木類・白檀・黒檀・紫檀などを輸入しています。また、驢馬・野牛を船に乗せ帰り、湖山池の青島に放ったと云われています。また、生姜をはじめシャム(タイ)の稲・明(中国)の茶・薬草なども持ち帰り領内各地で栽培させました。
なかでも日光池の干拓地などでは生姜栽培が定着。山に掘られた生姜穴で熟成し辛味を強くした「日光生姜」や「瑞穂生姜」、「茲矩生姜」などとして高い評価を得ているほか、生姜パウダーやケーキ、アイスクリームなど様々な加工品に活かされています。
亀井公墓所(気高町田仲)
鹿野城下を見下ろす小高い丘の上にある。墓標には「中山道月大居士」と刻まれている。「中山」とは琉球王国の国号。遠く海外に夢を馳せた亀井さんが偲ばれる。国史跡(H30.2月指定)。